特殊相対性理論で重力が扱えない簡単な理由
参考文献
アインシュタイン本人が自身の理論について説明している。しかもなんとそれが分かりやすい。アインシュタインの思考過程も垣間見ることが出来る。
物理的、直感的イメージを優先しているのが良く分かる。思考実験を巧みに用いて、物理現象の本質に迫っていく過程は、何か推理小説を読んでいるような感覚さえ覚える。
優れた理論物理学者は思考実験が上手いというのはどこかで聞いた話だが、それが実感できる。
優れた思考実験は、素朴でありながら、そこに物理理論の本質が詰め込まれているという、かなり欲張りなものである。そういう例を探してくることは、ものすごく難しい。
本題。
重力場が存在するとこの原理が破綻する。
これが特殊相対性理論で重力を扱えない理由である。ものすごく単純。
なぜ重力場が存在すると光速度が不変でなくなるのかというと、それは重力場の存在によって光の進路が湾曲することから分かる。光の進路が湾曲することは、光の速度(=運動の向き+速さ)が場所場所によって変化せざるを得ないことを意味するのだ。
光が空間を直進することは特殊相対論において非常に重要である。それはローレンツ変換を導く際の基本的要素であったから。もし光が場所によって(つまり重力場の存在する領域では)進行方向を変えるようなことがあると、もはやローレンツ変換を使うわけにはゆかなくなる。